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ナポリの街角 


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ナポリの街には1998年にフィレンツェで展覧会を開催した時に、一度だけ訪れたことがある。本当の目的地はアマルフィーだったのだけれど、運悪くゼネストにぶつかってしまったんだ。仕方ないのでナポリとサレルノの街を取材して帰った。イタリアを旅しているとよくストにぶつかる<春先に廻ることが多いからかも知れない>。ナポリを描いた絵は少ないんだけれど、この絵はとても気に入っているんだ。


時間があまりなかったので登山電車ってのには乗れなかったんだけど、街のだいぶ奥まで行って見た。ふだんだったら一人旅なのでそんな無茶はしないのだけど、その時はお手伝いを一人連れていたから、多少の冒険は出来たんだ。でも、知らない街だから僕らは同じようなところをきっとグルグルと歩いていたんだろうな!?本屋の隣にあるレストランの前に立って、誰かを待っている女の子の前を僕らは3度も通り過ぎたんだ!女の子は、時おり時計を覗き込んでいた。3度目の時は少しいらいらしたような表情だったので、僕は思わず彼女に「ゴドーさんはもうすぐ来るよ!!」って声を掛けてしまったんだ。彼女は微笑んで「そうね」って答えたんだよ。<ベケットを知っていたんだね>嬉しかった!!


この絵は何枚か描いたんだ。女の子の立ち位置を、少しずつ右にずらしている。左の空間を拡げているのは、彼女の待っている時間の長さ<経過>なんだ。まだ右側の壁までは空間が空いているから、もう少し女の子は辛抱して待っていられる。だから僕は少年になってゴドーさんのメッセージを伝えたんだ。


そのために僕は道に迷ったのかな!?きっとそんなちょっとしたことにもみんな意味があるんだね。


     

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ロンダの雨 


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ロンダは切り立った丘の上に白い建物の並ぶアンダルシアらしい美しい街だ
。僕はカディスからバスで入った。深い谷沿いの細くくねった道をバスが大きく蛇行するたびに<結構スピードも出してるんだ>覗く谷底に僕の目は釘付けになったんだ。恐ろしい事に所々にはバスの残骸が転がっていたんだよ。でももう後戻りは出来ない。そんな思いで訪れたので、この街には格別の思い入れがある。


雨の少ない街なのに、僕が着いた日はどんよりと空は低く、時おり小雨が降っていた。サザンの<TUNAMI>じゃないけど、僕は雨にはいろいろと思い出があるんだ。で、僕が雨の中をスケッチしながら歩いていると<ロンダには1泊の予定だったので>可愛い女の子が、雨の中に立っていたんだ。<スペインの女の子は大人びているから15?16歳ぐらいだったかも知れない>向こうで道端に女の子が立っているとだいたい娼婦なんだけど、彼女は絶対に違うと僕は思った。ふと目が合うと女の子はにっこりと微笑んでくれた。その<白い歯>が、僕を過去へと引き戻したんだ。少し離れたところから、僕は彼女の姿をスケッチした。彼女は時おりこっちに目をやりながら、黙って立っていた。


本当は傘を持たない彼女に、僕は絵の中で傘を差しかけた。<もしかしたら無常にも彼女は今もあの場所に立っているかも知れない>と、ふと思う。そうしたらあの日、白く輝いていた美しい<歯>も今はもうないかも知れない。僕は彼女の時を止めるために、顔は描かなかった。そして近づいてくる幸せも描いてみたんだ。僕に出来るのはここまで。そうやっていろいろな事をを念じながら、僕もこうして年を重ねていくんだ。

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